印刷(PDF/246KB)はこちらから 2025年10月14日 研究開発

日本血液学会(JSH)2025における開発中の抗がん剤enzomenib(DSP-5336)に関する最新の臨床データ発表のお知らせ

住友ファーマ株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長:木村 徹)は、日本血液学会(JSH: The Japanese Society of Hematology)の2025年年次総会(開催時期:10月10日~10月12日、開催場所:神戸市)において、開発中の抗がん剤であり、再発または難治性の急性白血病を対象としたメニン-KMT2Aタンパク質結合阻害剤enzomenib(一般名、開発コード:DSP-5336)に関する臨床データを発表しましたので、お知らせします。

enzomenibのフェーズ1/2試験(以下、「本試験」)の新たな予備的な臨床データは、米国血液学会(ASH:American Society of Hematology)の2024年年次総会(開催時期:2024年12月7日~12月10日、開催場所:米国サンディエゴ)において発表しましたが、JSH2025では、それらのデータとともに日本人患者のデータを新たに抽出、解析した結果を口頭発表しました。
本試験の安全性解析対象集団(以下、「全体集団」)は急性白血病患者84例で構成され、そのうち94%(79/84例)が急性骨髄性白血病でした。試験には多様な患者が組み入れられ、白人以外が47.6%(40/84例)であり、うち日本人(以下、「日本人集団」)は22例で、その96%(21/22例)が急性骨髄性白血病でした。
enzomenib は、40mg 1日2回から300mg 1日2回までの用量を、28日のサイクルで連続投与されました。全体集団と日本人集団のいずれにおいても、enzomenib の忍容性は良好で、enzomenibと関連のある有害事象の発現率は全体的に低く、用量制限毒性(DLT)は認められませんでした。分化症候群は全体集団の10.7%、および日本人集団の13.6%の患者で報告されましたが、死亡例やenzomenibの投与中止に至るものは認められていません。
また、用量最適化コホートにおける200mg 1日2回および300mg 1日2回の投与量における予備的な有効性のデータも発表しました。このデータには、KMT2A遺伝子の再構成またはnucleophosmin 1(NPM1)遺伝子の変異を有し、enzomenibを少なくとも1回投与され、メニン阻害剤の治療を受けたことのない全例のデータ(全体集団:40例、日本人集団:12例)が含まれています。全体集団では、ELN-2017ガイドラインに基づく客観的奏効率(ORR)は62.5%(25/40例)、完全寛解+部分的血液学的回復を伴う完全寛解(CR+CRh)達成率は37.5%(15/40例)でした。日本人集団におけるORRは75.0%(9/12例)、CR+CRh達成率は41.7%(5/12例)でした。
これらの結果より、enzomenibは、日本人の再発・難治性急性白血病患者において、全体集団と同様に良好な安全性プロファイルと臨床効果を示し、KMT2A再構成またはNPM1遺伝子変異を有する再発または難治性の急性白血病患者の治療に、enzomenibが重要な役割を果たす可能性が示唆されました。
白血病は造血組織に発生する血液悪性腫瘍の一種で、骨髄における血液細胞(通常は白血球)の無秩序な増殖を特徴とします。白血病の一種である急性白血病では、血液細胞が急速に増殖し、突然症状が現れるため、早急な治療が必要とされています。急性骨髄性白血病患者さんの約30%がNPM1遺伝子の変異を有し、5~10%がKMT2A遺伝子の再構成を有しているといわれています。

また、JSH2025では、再発または難治性の骨髄線維症患者を対象としたPIM1阻害剤nuvisertib(一般名、開発コード:TP-3654)のフェーズ1/2試験に関する臨床データも口頭で発表されました。こちらは2025年欧州血液学会(EHA、開催時期:2025年6月12日~6月15日、開催場所:イタリア ミラノ)で発表した内容であり、nuvisertibの忍容性は良好で、症状の反応と相関するサイトカインおよび脾臓容積の改善を含む臨床効果が示唆されました。
骨髄線維症は稀な血液悪性腫瘍の一種で、JAKシグナル伝達経路の調節異常によって骨髄に線維組織が蓄積することを特徴とし、血液細胞の産生に影響を及ぼすことがあります。骨髄線維症は重篤かつ希少な疾患であり、世界中で毎年10万人あたり0.7人が新たに発症しています。

今後も、当社はenzomenibおよびnuvisertibの開発を通じて、治療選択肢の少ない急性白血病患者および骨髄線維症患者の治療成績の改善に貢献していきます。

本件に関連するプレスリリースとして、以下を開示しています。

ご参考

enzomenib(DSP-5336)について

enzomenib(DSP-5336)はメニンタンパク質とKMT2A(lysine methyltransferase 2A)タンパク質との結合を阻害する低分子経口剤です。KMT2A遺伝子の再構成やNPM1遺伝子の変異を有する急性骨髄性白血病では、メニンとKMT2Aの結合による、造血幹細胞の維持に必要となる遺伝子の異常発現が認められ、急性骨髄性白血病の発症・維持に関連しているといわれています。本剤は、非臨床試験において、メニンとKMT2Aの結合を阻害することにより、それらの遺伝子の発現減少を介した抗腫瘍作用が示されました。本剤は、米国食品医薬品局(FDA)から、2022年6月に急性骨髄性白血病の適応でオーファンドラッグ指定を、2024年6月にKMT2A遺伝子の再構成またはNPM1遺伝子の変異を有する再発または難治性の急性骨髄性白血病の適応でファストトラック指定を受けています。また、厚生労働省から、2024年9月に、再発または難治性のKMT2A遺伝子再構成陽性またはNPM1遺伝子変異陽性の急性骨髄性白血病の適応で希少疾病用医薬品指定を受けています。

nuvisertib(TP-3654)について

nuvisertib(TP-3654)は、PIM1(proviral integration site for Moloney murine leukemia virus 1)キナーゼ阻害を介して炎症性シグナル経路を抑制します。PIM1キナーゼは、様々な血液がんおよび固形がんにおいて過剰発現し、がん細胞のアポトーシス回避、腫瘍増殖の促進につながる可能性があります。本剤は骨髄線維症の適応で、FDAから2022年5月にオーファンドラッグ指定を、2025年6月にファストトラック指定を、厚生労働省から2024年11月に希少疾病用医薬品指定を、欧州医薬品庁(EMA)から2025年7月にオーファンドラッグ指定を受けています。

以上

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