パーキンソン病の原因

監修 村田美穂先生

私たちが体を動かしたり、胃が食べたものを消化したり、汗をかいたりする動きや働きは、すべて脳からの指令で行われています。この脳から体の各部分への指令は、神経伝達物質という物質が神経細胞を通じて流れることで伝えられています。パーキンソン病の患者さんは、脳の中で神経伝達物質のドパミンが不足することで、指令がうまく伝わらなくなっています。

このドパミンは脳の中脳の黒質という部分の神経細胞で作られていますが、パーキンソン病の患者さんの脳では、黒質の細胞が減りドパミンの作られる量が少なくなっています。通常であれば、黒質で作られたドパミンは大脳の 線条体 という部位で、脳のさまざまな部分との連絡役として働き、体の動きや働きを調節します。しかし、パーキンソン病の患者さんは、ドパミンが不足して十分な調節が行えないため、体の働きに支障が出るようになり、運動症状や 非運動症状 が現れると考えられています。

なぜ黒質の神経細胞が減少するのかは、まだ完全には分かっていません。しかし、パーキンソン病の患者さんの脳を調べると、ドパミンを作る神経細胞などに、レビー小体というタンパク質の塊ができていることが知られています。レビー小体の主な成分はアルファ・シヌクレインという異常なタンパク質で、このタンパク質が神経細胞にたまると、神経細胞がダメージを受けて減ることが分かっており、アルファ・シヌクレインやレビー小体がパーキンソン病の原因ではないかといわれています。

また、パーキンソン病のほとんどは、家族や親戚には患者さんのいない孤発性パーキンソン病ですが、一部には遺伝による家族性パーキンソン病もあります。そのため、パーキンソン病の発症には、環境や遺伝など、多数の要因が関係すると考えられています。

体の動きを調節する神経伝達物質:ドパミン

▶ドパミンは中脳の黒質でつくられる◀

ドパミンは中脳の黒質でつくられる

村田美穂監修:スーパー図解パーキンソン病. 法研, 東京, p35, 2014

パーキンソン病の発症にかかわる?レビー小体

▶レビー小体は、パーキンソン病発病メカニズム解明の鍵として注目されている◀

レビー小体は、たんぱく質の塊で、神経細胞に発生する異常な蓄積物。
レビー小体が出現する疾患を「レビー小体病」といい、パーキンソン病のほかにはレビー小体型認知症などがある。

中脳の黒質を顕微鏡で見ると・・・
正常な中脳

正常な中脳

矢印のところに、メラニン色素を含むドパミン神経細胞が集まり、黒く見える部分「黒質」がはっきりと確認できる

パーキンソン病の中脳

パーキンソン病の中脳

ドパミン神経細胞が変性し、減少したため「黒質」の黒い色が抜け落ち、白っぽく見える

レビー小体

レビー小体

※ヘマトキリシン・エオジンというもので赤く染色されている

村田美穂監修:スーパー図解パーキンソン病. 法研, 東京, p39, 2014