Effective Use of Resources 省資源の取組

水資源の有効利用の取組

医薬品製造をはじめとする当社の事業活動において、良質で十分な量の淡水は必要不可欠です。世界的に水資源の問題が深刻化する中、当社は水資源を持続的に利用するため、中長期環境目標で「2030年度までに水使用量を2018年度比で12%削減する」目標を定めています。また、水の使用量削減は、取水源の保護につながり、間接的に生物多様性の保全に資する活動と考えています。
当社は、テナントなどの小規模なオフィスを除く当社グループ全事業場の水使用量および排水量を管理しています。水資源の有効活用に向け、これまでに設備・機器の洗浄回数の見直しや動物飼育室洗浄用蛇口への節水ノズル設置などの施策を実施しており、2023年度は前年度から引き続き、空調の冷却に必要となる水使用量を削減するために、空調稼働調整を行いました。一方で、増産の影響により単体における水使用量は前年度より増加しました。

中期環境目標進捗状況の詳細は「環境目標およびパフォーマンス」をご覧ください。

今後も継続的に水使用の効率化や節水対策を進め、水の使用量削減に取り組んでいきます。

水使用量と取水源別の内訳

水使用量削減目標と推移(単体)

水使用量推移(連結)と取水源別の内訳

集計対象:
連結(住友ファーマ株式会社、国内連結子会社、海外連結子会社)ただし、支店・営業所など小規模なオフィスを除く。また、海外連結子会社で生産拠点または主要な研究拠点を持たない会社は、小規模なオフィスしか有さないため、集計対象から除いている。
算定基準の詳細は「ESGデータ一覧」をご覧ください。

排水量と排水先別の内訳

集計対象:
連結(住友ファーマ株式会社、国内連結子会社、海外連結子会社)ただし、支店・営業所など小規模なオフィスを除く。また、海外連結子会社で生産拠点または主要な研究拠点を持たない会社は、小規模なオフィスしか有さないため、集計対象から除いている。
算定基準の詳細は「ESGデータ一覧」をご覧ください。

水リスクへの対応

世界的に水リスクへの懸念が高まる中、当社グループは国内外の生産および研究拠点における現在と将来の水ストレス、下流環境の脆弱性および水災に関するリスクについて、世界資源研究所(WRI)の水リスク評価ツールであるAqueductや、生物多様性リスク測定ツールであるIBAT(Integrated Biodiversity Assessment Tool)等のデータベースを用いて評価を定期的に実施しています。流域における水供給量の将来予測シミュレーションにはIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change:国連気候変動に関する政府間パネル)のRCP8.5シナリオ(代表濃度経路シナリオ(Representative Concentration Pathways)の高位参照シナリオ)を使用しています。さらに、当社の生産および研究拠点へのヒアリング等により、それぞれの拠点で過去に実際に発生した水関連問題や将来的な地域固有の課題を調査しています。これらの結果をもとに総合的に分析した結果、当社生産および研究拠点については、現在の水リスクは相対的に低いと考えています。

生産および一部の研究拠点からの排水に関しては、水質汚濁防止法環境基準値より厳しい自主基準を設けて環境汚染を防止しています。

気候変動に伴う水リスクと水関連機会については、TCFD提言に沿った分析・評価を継続し、水リスク低減に向けた具体的な取組を進めています。
気候変動に伴う水リスクと水関連機会の詳細は「TCFD提言に基づく情報開示(気候変動対応)」をご覧ください。

バリューチェーン上のリスク管理として、重要な製品の原料メーカーや製造委託先のAqueductを用いた水リスク評価を継続しています。また「ビジネスパートナーのためのサステナブル行動指針」に基づき、サプライヤーをはじめとするビジネスパートナーに対して本行動指針の取組状況等を確認して評価する「サステナビリティ評価」を実施しており、「サステナビリティ調査票」を用いてビジネスパートナーにおける水使用量や排水量の把握、排水中の汚染物質の管理状況、節水・リサイクルの取組状況を確認しています。今後も、ビジネスパートナーとのコミュニケーションを深め、バリューチェーン全体で水リスクの低減に取り組んでいきます。

ビジネスパートナーに対するサステナビリティ評価については「ビジネスパートナーのためのサステナブル行動指針」および「コミュニケーションの推進」をご覧ください。

WRI Aqueductによる水リスク評価結果(対象:当社グループ生産・研究拠点)

水ストレス評価 2023年度(2023年4月~2024年3月)実績
水ストレスレベル 日本 海外
拠点数 2023年度
取水量(千トン)
拠点数 2023年度
取水量(千トン)
Low(<10%) 1 291 0 0
Low - Medium(10-20%) 4 536 0 0
Medium - High(20-40%) 0 0 1(アメリカ) 7
High(40-80%) 0 0 1(中国) 24
合計 5 827 2 31

水関連問題によるリスクと機会

リスクの要因 詳細 影響
規制によるリスク 取水量の制限 当社事業に必要な各種の水を確保するための追加費用が発生する。 設備投資や運用コストの増加
排水基準の強化 当社の排水を排出可能な水質にするための追加費用が発生する。
物理的影響によるリスク 自然災害(豪雨、洪水など)の増加・激甚化 当社事業に関わる施設(自社およびサプライチェーン)の被災や水需給の変化により、製品の供給停止や遅延が発生する。また、研究開発に遅延が生じる。 収益低下
ビジネス機会の損失
取水量の低下、水質の悪化 当社事業に必要な各種の水の量および質を確保するための追加費用が発生する。 設備投資や運用コストの増加
評判によるリスク 外部ステークホルダーの評価 当社の水関連活動や情報発信の不足のために外部の評価が低い場合、企業価値が低下する。 株価の低下
機会の要因 詳細 影響
規制による機会 取水量の制限 水リサイクルや水使用量削減により水資源の有効利用が実現できた場合、水関連コストの削減につながる。 運用コストの低下
物理的影響による機会 水資源の質の悪化による感染症リスクの増加 既存薬の提供や新薬・ワクチンの開発を通じて、感染症の予防および治療に貢献する。 ビジネス機会や収益の拡大
評判による機会 外部ステークホルダーの評価 水リスク低減を実現した場合、当社の持続可能性が高まり、企業価値が向上する。 株価の上昇

廃棄物の削減の取組

当社は、限りある資源を有効に利用するため、中長期環境目標のもと、廃棄物の3R(リデュース、リユース、リサイクル)に積極的に取り組んでいます。
2023年度は2022年度に続き中期環境目標のうち廃棄物の最終埋立処分量を発生量の0.5%未満に維持する目標を達成しました。また、再資源化率に関する中期環境目標についても達成しました。
2024年度からの中長期環境目標の重点課題「資源循環」に、プラスチックを利用する製造企業の責務として「2030年度の廃プラスチック再資源化率を65%以上にする」ことを掲げました。「資源循環」の目標達成のため、PTP包装廃材のマテリアルリサイクル化や使用しなくなった研究機器などの有価物化などさまざまな取組を行っています。

中期環境目標達成状況の詳細は「環境目標およびパフォーマンス」をご覧ください。

今後も廃棄物分別の徹底や有価物化、リサイクル可能な廃棄物処理業者への委託などを積極的に進め、再資源化を推進していきます。

廃棄物削減、再資源化を目的として以下の取組を推進しています。

  • PTP包装廃材のマテリアルリサイクル化※1
  • 脱ペットボトルの取組として、各事業所に設置・管理しているすべての自動販売機からペットボトルを廃止
  • 使用しなくなった実験機器の再利用を目的とした売却※2
  • 各事業所、支店、営業所で使用不可となったクリアホルダーを回収し、株式会社アスクルが展開する資源循環プラットフォーム※3を活用したリサイクル活動に参画

廃棄物関連指標の推移

廃棄物発生量と再資源化量、再資源化率
廃棄物の再資源化率
最終処分埋立量と最終処分率
廃棄物の最終処分率

集計対象:住友ファーマ株式会社単体(支店・営業所を除く)

PCB廃棄物の処理・保管

ポリ塩化ビフェニル(PCB)を使用したトランスやコンデンサ、蛍光灯安定器などのPCB廃棄物については、PCB特別措置法に基づき各事業所で順次処分を進めており、高濃度PCB廃棄物は処分を完了しました。当社は引き続き、低濃度PCB含有廃棄物の処理を完了するまでの期間、適切な管理・保管を継続します。

PCB管理状況 2024年9月時点
保管中の高濃度PCB廃棄物数 0台
保管中または使用中の低濃度PCB廃棄物数 4台

製品用容器包装資材の再資源化

当社は容器包装リサイクル法に基づき、当社製品に使用した容器包装資材の一部を再資源化しています。
今後も容器包装のリサイクル義務を果たすとともに、包装資材の使用量削減や再生可能な資源への置き換えにも積極的に取り組んでいきます。

製品用梱包資材使用量、再商品化委託量※4(2022年度実績)
製品用梱包資材 使用量(t) 再商品化委託量(t)
プラスチック 323 94
ガラス(茶色) 36 9
204 4

再資源化実施委託料金合計:6,251千円

  • ※4再商品化委託量は、国が決定する再商品化義務量算定係数を基に算出しています。

化学物質の排出削減の取組

当社の使用している化学物質で取扱量が多いのは、トルエン、メチルアルコール、アセトンなどです。これらの化学物質は主に溶媒として使用され、そのほとんどは最終的に廃油などの廃棄物として処理されています。ジクロロメタンなどの揮発しやすい溶媒については、回収装置を設置するなどの対策を積極的に進め、大気中への漏出を防止しています。当社は、2023年度実績でPRTR法の届出対象となる全事業所において、適切に届出を行いました。
また当社は、水質汚濁防止法等に則り、適切に届出を行っています。排出水の定期点検など継続的な監視を行うとともに、有害物質による汚染を未然に防止するための施策を講じ監視体制の強化に努めています。

中期環境目標達成状況の詳細は「環境目標およびパフォーマンス」をご覧ください。

化学物質排出関連指標の推移

PRTR※5対象物質推移
PRTR推移
VOC※6対象物質推移
VOC対象物質推移
  • ※5PRTR(Pollutant Release and Transfer Register):化学物質排出移動量届出制度(2023年度実績は、2023年4月1日施行のPRTR法施行令で定められた対象物質について集計。)
  • ※6VOC(Volatile Organic Compounds):揮発性有機化合物

環境保全システムの整備

グリーン調達

当社はグリーン調達基本方針に従い、事務用品などのグリーン調達ガイドラインを運用しています。グリーン調達ガイドラインに基づき、環境面に配慮した商品を優先的に選択しています。2023年度の事務用品のグリーン購入比率は51%でした。引き続き、従業員にグリーン購入を推奨していきます。今後も、グリーン調達の対象品目の拡大などにより、さらなるグリーン調達を推進していきます。

グリーン物流

当社はグリーン物流ガイドラインを運用しており、物流センター、生産拠点で各種の活動をしています。2023年度は、保冷車空調用外部電源の提供、構内アイドリングストップを協力依頼(物流センター)、出荷製品の効率配送(鈴鹿工場)、船輸送・積み合わせ出荷によるCO2削減(大分工場)など合計43件の取組を実施しました。

グリーン製品開発

当社は、グリーン製品開発の規約・要領を策定し、R&D本部とサプライチェーン本部で運用しています。2023年度は、有機溶媒使用量削減やLC分析における高速メソッドの適用による環境負荷の低減(R&D本部)や、処方製法変更を通じた生産効率向上による使用エネルギーの削減、PQ(Performance Qualification)・PV(Process Validation)検討の削減による原料および試験試薬の削減、環境対応資材の情報収集とバイオマス資材のPTP包装への適用検討(鈴鹿工場)など33件の取組を行いました。

グリーン設備設計

当社は、サプライチェーン本部、研究所、大阪本社においてグリーン設備設計を運用しています。2023年度は、自動粉体物性測定装置の導入、給湯配管更新(鈴鹿工場)、空冷チラー更新(総合研究所)、照明器具のLED化(大分工場、鈴鹿工場、総合研究所)など合計15件の取組を行いました。