Biodiversity 生物多様性への取組
当社は、「事業活動が生物多様性の恩恵を深く享受し、事業活動に伴う環境負荷が生物多様性に様々な影響を与え得ることを認識するとともに、自然関連の依存や影響を緩和する」という方針に基づき取組を行い、その内容を下表にまとめています。また、中期環境計画(2024~2026年度)において、「適時適切な情報開示と積極的な対話を行う」という目標を掲げ、TNFD提言に基づく情報開示に向けて取組を進めています。
当社の取組方針および目標は、「自然共生社会の構築を通じた持続可能な社会の実現」を目指す「経団連生物多様性宣言・行動指針(改定版)」※1の理念と合致しており、当社はこれに賛同しています。
- ※1日本経済団体連合会「経団連生物多様性宣言・行動指針」:https://www.keidanren.or.jp/policy/2023/082_honbun.html
事業活動と生物多様性の関係
当社の事業活動と生物多様性の関係を当社の取組と合わせて下表にまとめています。
今後はTNFD提言に基づく詳細な分析を行い、リスクと機会の特定および評価へと進めていく予定です。
項目名※2 | 事業活動 | 生物多様性との関係 | 依存/影響の緩和のための当社の取組 | 取組の詳細 | |
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依存/影響 | 説明 | ||||
GHG(温室効果ガス)排出 | 原材料調達 輸送(上流) 研究・開発、生産(直接操業) 輸送(下流) 使用 |
影響 | 大気中のGHG増加に伴う気候変動が生物の生息環境を悪化させます。 | 当社グループは、2023年11月にSBTイニチアチブによる認定を取得し、Scope1および2においてGHG削減のロードマップを策定し、目標達成に向けて取組を進めています。また、Scope3においては、サプライヤーからの1次データ取得やビジネスパートナーとの協働を通じ、目標達成に向けて取組を進めています。 | カーボンニュートラル TCFD提言に基づく情報開示(気候変動対応) |
水資源の利用 | 原材料調達 研究・開発、生産(直接操業) |
依存/影響 | 水質や供給量に依存するとともに、水の過剰な使用は、取水源の劣化につながり、周囲の生態系に影響を及ぼします。 | 医薬品製造をはじめとする当社の事業活動に水資源は不可欠です。中長期環境目標に「2030年度までに水使用量を2020年度使用量以下にする」を掲げ、水使用量削減の取組を進めています。 | 水・資源循環 |
大気・水への排出 | 原材料調達 研究・開発、生産(直接操業) |
影響 | 化学物質による土壌汚染、大気汚染、水質汚染等が生物の生息環境を悪化させます。 | 主要な塩素系溶媒に対する回収装置を設置し、環境中への漏出を防止しています。また、生産および一部の研究拠点からの排水に関し、水質汚濁防止法の環境基準値より厳しい自主基準を設けて環境汚染を防止しています。 | 汚染防止 |
水への排出 / 廃棄物の発生 | 原材料調達 生産(直接操業) |
影響 | 排水や廃棄物として環境に排出した抗生物質が薬剤耐性を引き起こした場合に、広範な感染症の発生の可能性があります。 | AMR Industry Allianceが「責任ある抗生物質製造」の基準として公表するAntibiotic Manufacturing Standard※3に基づき、当社の製造サイトに対する社内監査を定期的に実施し、問題がないことを確認しています。 | ー |
廃棄物の発生 | 原材料調達 輸送(上流) 研究・開発、生産(直接操業) 輸送(下流) 使用 |
影響 | 廃棄物(特に有害廃棄物)が適切に処理されない場合、汚染の原因となって生物の生息環境を悪化させます。 | 廃棄物の再資源化率および最終処分率に関する数値目標を設定し、更に廃プラスチックの再資源化率に関する目標も設定して、廃棄物の3R(リデュース、リユース、リサイクル)に積極的に取り組んでいます。 | 水・資源循環 |
エネルギー資源、生物資源などの利用 | 原材料調達 研究・開発、生産(直接操業) |
依存 | 資源の乱獲や過剰消費は、種の絶滅や生態系サービスの修復困難な劣化を招きます。 | 事務用品などにおけるグリーン調達ガイドラインの運用、廃棄物の有価物化やリサイクル可能な廃棄物処理業者への委託、省エネ促進などを通じて省資源や資源の有効活用に取り組んでいます。また、「ビジネスパートナーのためのサステナブル行動指針」において、ビジネスパートナーに資源の効率的な利用や持続可能な調達を要請するとともに、主要なサプライヤーに対する取組状況の調査を実施しています。 |
カーボンニュートラル 水・資源循環 ビジネスパートナーとともに |
遺伝子組換え生物等の使用 | 研究・開発(直接操業) | 影響 | 遺伝子組換え生物等は、その形質次第で野生動植物の急激な減少などを引き起こし、生物の多様性に影響を与える可能性が危惧されています。 | 創薬研究における遺伝子組換え実験にあたって、「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(カルタヘナ法)」を遵守し、安全管理を徹底しています。 | 創薬研究/製品開発研究 |
- ※2 ENCORE※4 (2024 update) および WWF Biodiversity Risk Filter※5の評価ツールにおいて製薬セクターが潜在的に高い依存/影響を有するとされる項目
- ※3 Antibiotic Manufacturing Standard:https://www.amrindustryalliance.org/antibiotic-manufacturing-standard/
- ※4 ENCORE(Exploring Natural Capital Opportunities, Risks and Exposure):https://encorenature.org/en
- ※5 WWF Biodiversity Risk Filter:https://riskfilter.org/biodiversity/home
「住友ファーマの森」における「フクロウの森保全プロジェクト」
現在の日本では、森林の維持管理の担い手が不足し、環境保全機能の衰えが指摘されています。とくに竹林の拡大による森林の荒廃は深刻であり、生物多様性の保全に大きな影響を与えていることから、持続可能な森林の保全体制として、行政・企業・地域が協働して再生に取り組む重要性が叫ばれています。
当社は、2015年10月から2020年9月まで、大阪府の「アドプトフォレスト制度(森林養子縁組制度)」を利用し、地域の特定非営利活動法人「神於山保全くらぶ」とともに、岸和田市が推進する環境保全活動である「フクロウの森再生プロジェクト」に参画しました。
当社は、岸和田市三ヶ山町にある0.45ヘクタールの里山林を「住友ファーマの森」として、この地域の生態系ピラミッドの頂点にあるフクロウが生息できる豊かな自然環境を再生・維持することを目的に、5カ年計画によって責任をもって良好な里山としての環境を形成することに努めました。その結果、住友ファーマの森や周辺の森の整備が進み、当社の森に近い場所に設置された巣箱にフクロウが戻り、生態系が戻ってきています。
当社はこの生態系を維持・改善するために、2020年10月から2023年9月まで継続して「フクロウの森保全プロジェクト」として同地域の環境保全活動に取り組みました。
これまでに従業員やその家族が参加した住友ファーマの森の保全活動の状況は、以下のとおりです。
年度 | 参加人数 |
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2023年度 | 60名(一定の効果が認められたので、9月で活動終了) |
2022年度 | 63名 |
2021年度 | 13名 |
2020年度 | 20名 |
2019年度 | 128名 |
2018年度 | 127名 |
2017年度 | 187名 |
2016年度 | 166名 |
2015年度 | 136名 |

植樹した木と雑草との違いを明確にするために
伐採した竹を活用して添え木を設置(2023年4月)

毎回の活動開始時に活動の目的と
安全対策のための説明を行う様子(2023年5月)

「住友ファーマの森」の中にある池に
伐採した竹を活用して柵を設置(2023年6月)