Biodiversity 生物多様性への取組
当社は、事業活動が生物多様性の恩恵を深く享受し、事業活動に伴う環境負荷が生物多様性に様々な影響を与え得ることを認識しています。当社の事業活動が及ぼす自然関連の依存や影響について、環境会計における環境保全効果として示す環境負荷量の前年度との比較によって重大な変化がないことを毎年確認しています。
また、生物多様性の保全やその持続可能な利用には、一人ひとりの意識向上や長期的な取組が重要です。当社では、「生物多様性に資する地域活動への積極的な参加」を目標に掲げ、多様な組織や団体と連携して環境保全活動などの社会貢献活動にも積極的に取り組んでいます。
当社の取組方針および目標は、「自然共生社会の構築を通じた持続可能な社会の実現」を目指す「経団連生物多様性宣言・行動指針(改定版)」※の理念と合致しており、当社はこれに賛同しています。
環境会計における環境保全効果の詳細は「環境目標およびパフォーマンス」をご覧ください。
- ※日本経済団体連合会「経団連生物多様性宣言・行動指針」:https://www.keidanren.or.jp/policy/2023/082_honbun.html
事業活動と生物多様性の関係
当社の事業活動と生物多様性の関係を当社の取組と合わせて下表にまとめています。
今後はより詳細な分析を行い、リスクと機会の特定および評価へと進めていく予定です。
項目名 | 事業活動 | 生物多様性との関係 | 当社の取組 | 取組の詳細 |
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GHG(温室効果ガス)排出 | 原材料調達 輸送(上流) 研究・開発、生産(直接操業) 輸送(下流) 使用 |
大気中のGHG増加に伴う気候変動が生物の生息環境を悪化させます。 | 当社グループは、2023年11月にSBTイニチアチブによる認定を取得し、Scope1および2においてGHG削減のロードマップを策定し、目標達成に向けて取組を進めています。また、Scope3においては、CDPサプライチェーンプログラムやビジネスパートナーとの協働を通じ、目標達成に向けて取組を進めています。 | 低炭素社会構築への貢献 TCFD提言に基づく情報開示(気候変動対応) |
水資源の利用 | 原材料調達 研究・開発、生産(直接操業) |
水の過剰な使用は、取水源の劣化につながり、周囲の生態系に影響を及ぼします。 | 医薬品製造をはじめとする当社の事業活動に水資源は不可欠です。中長期環境目標に「2030年度までに水使用量を2018年度比で12%削減する」を掲げ、水使用量削減の取組を進めています。 | 省資源の取組 |
大気・水への排出 | 原材料調達 研究・開発、生産(直接操業) |
化学物質による土壌汚染、大気汚染、水質汚染等が生物の生息環境を悪化させます。 | 主要な塩素系溶媒に対する回収装置を設置し、環境中への漏出を防止しています。また、生産および一部の研究拠点からの排水に関し、水質汚濁防止法の環境基準値より厳しい自主基準を設けて環境汚染を防止しています。 | 省資源の取組 |
廃棄物の発生 | 原材料調達 輸送(上流) 研究・開発、生産(直接操業) 輸送(下流) 使用 |
廃棄物(特に有害廃棄物)が適切に処理されない場合、汚染の原因となって生物の生息環境を悪化させます。 | 廃棄物の再資源化率および最終処分率に関する数値目標を設定し、更に廃プラスチックの再資源化率に関する目標も設定して、廃棄物の3R(リデュース、リユース、リサイクル)に積極的に取り組んでいます。 | 省資源の取組 |
エネルギー資源、生物資源などの利用 | 原材料調達 研究・開発、生産(直接操業) |
資源の乱獲や過剰消費は、種の絶滅や生態系サービスの修復困難な劣化を招きます。 | 事務用品などにおけるグリーン調達ガイドラインの運用、廃棄物の有価物化やリサイクル可能な廃棄物処理業者への委託、省エネ促進などを通じて省資源や資源の有効活用に取り組んでいます。また、「ビジネスパートナーのためのサステナブル行動指針」において、ビジネスパートナーに“環境効率”や“持続可能な資源調達とトレーサビリティ”に関する取組を要請するとともに、主要なサプライヤーに対する取組状況の調査を実施しています。 | コミュニケーションの推進 低炭素社会構築への貢献 省資源の取組 ビジネスパートナーのためのサステナブル行動指針 |
遺伝子組換え生物等の使用 | 研究・開発(直接操業) | 遺伝子組換え生物等は、その形質次第で野生動植物の急激な減少などを引き起こし、生物の多様性に影響を与える可能性が危惧されています。 | 創薬研究における遺伝子組換え実験にあたって、「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(カルタヘナ法)」を遵守し、安全管理を徹底しています。 | 創薬研究/製品開発研究 |
「住友ファーマの森」における「フクロウの森保全プロジェクト」
現在の日本では、森林の維持管理の担い手が不足し、環境保全機能の衰えが指摘されています。とくに竹林の拡大による森林の荒廃は深刻であり、生物多様性の保全に大きな影響を与えていることから、持続可能な森林の保全体制として、行政・企業・地域が協働して再生に取り組む重要性が叫ばれています。
当社は、2015年10月から2020年9月まで、大阪府の「アドプトフォレスト制度(森林養子縁組制度)」を利用し、地域の特定非営利活動法人「神於山保全くらぶ」とともに、岸和田市が推進する環境保全活動である「フクロウの森再生プロジェクト」に参画しました。
当社は、岸和田市三ヶ山町にある0.45ヘクタールの里山林を「住友ファーマの森」として、この地域の生態系ピラミッドの頂点にあるフクロウが生息できる豊かな自然環境を再生・維持することを目的に、5カ年計画によって責任をもって良好な里山としての環境を形成することに努めました。その結果、住友ファーマの森や周辺の森の整備が進み、当社の森に近い場所に設置された巣箱にフクロウが戻り、生態系が戻ってきています。
当社はこの生態系を維持・改善するために、2020年10月から2023年9月まで継続して「フクロウの森保全プロジェクト」として同地域の環境保全活動に取り組みました。
これまでに従業員やその家族が参加した住友ファーマの森の保全活動の状況は、以下のとおりです。
年度 | 参加人数 |
---|---|
2023年度 | 60名 |
2022年度 | 54名 |
2021年度 | 13名 |
2020年度 | 20名 |
2019年度 | 128名 |
2018年度 | 127名 |
2017年度 | 187名 |
2016年度 | 166名 |
2015年度 | 136名 |

植樹した木と雑草との違いを明確にするために
伐採した竹を活用して添え木を設置(2023年4月)

毎回の活動開始時に活動の目的と
安全対策のための説明を行う様子(2023年5月)

「住友ファーマの森」の中にある池に
伐採した竹を活用して柵を設置(2023年6月)
担当者の声

2015年10月から2023年9月まで8年間活動を継続してきました。開始当時の「住友ファーマの森」の状況からは大きく変化しました。竹林を伐採し、整備を継続したことで多種類の生き物や植物など出現し、近くの森にはフクロウが戻ってきました。本活動は一定の効果が認められたことから2023年9月で終了しましたが、生物多様性の取組の一つとして、フクロウが生息できる豊かな自然環境を再生・維持するという共通の目標を持って多くの従業員等が参画した非常に有意義な活動でした。
コーポレートコミュニケーション部 CSRグループ 増井 佑美、 郡 真二郎 (所属部署は取材当時のものです)